【独自分析】店舗の立退料の最新相場と正しい計算方法|弁護士が裁判例50件を踏まえて解説
店舗の立ち退き通知を受け取ったあなたは、「いくら請求できるのか?」「このまま立ち退いて損をしないか?」という不安に直面しているはずです。
住宅の立退料と違い、店舗の立退料は相場がなく、計算方法も複雑です。「賃料の〇年分」といった素人判断は数百万円単位の損に繋がりかねません。
この記事では、実際の裁判例(令和1年~6年の約50件)を分析した結果、店舗の立退料の相場や算定方法、交渉のポイントをわかりやすく解説します。
1 店舗の立退料が支払われる理由(正当事由)
店舗の立退料は、借地借家法第28条の「正当事由」の判断の中で補完的要素として考慮されます。
借地借家法28条では、賃貸借契約を終了させるためには、賃貸人・賃借人それぞれの建物使用の必要性等を総合的に評価し、正当事由が必要とされています。
店舗の場合、
・営業の継続性
・顧客基盤
・設備投資
等により、賃借人の建物使用の必要性が高いのが通常です。
そのため、立退料の支払いなしに明け渡しが認められるケースは極めて少ないと言えます。

2 [独自分析] 店舗の立退料の最新相場!業種別・平米単価を裁判例50件から徹底公開
令和1年から令和6年の裁判例訳50件から、店舗の立退料(概算値)を業種別に整理した結果は以下のとおりです。
収集事例では、裁判所の鑑定等により算定されたケースが多数を占めます。
| 業種 | 立退料(概算値) | 平米単価(概算値) |
| 飲食店(居酒屋、タイ料理、喫茶、台湾料理、蕎麦屋、レストラン等) | 120万~6500万円 | 3万~133万円 |
| ラーメン店 | 850万~2100万円 | 20万~40万円 |
| 葬祭場 | 1億1000万円 | 33万円 |
| 個室ビデオ | 5000万円 | 22万円 |
| 歯医者 | 200万~5000万円 | 27万~86万円 |
| 洋服店 | 400万~900万円 | 15万~75万円 |
| 事務所 | 300万~1200万円 | 9万~23万円 |
| 理容室、美容室 | 600万~1600万円 | 12万~62万円 |
※面積、売上規模、立ち退き理由、移転困難性などにより変動します。
※実際には、営業補償や工作物補償の内容によって数千万円を超えることもあります。
(1)「賃料の〇年分」は妥当?店舗の立退料と賃料の関係
居住用建物の立退料では、「賃料の数か月分」という説明がされることがありますが、店舗の立退料に「賃料の2~3年分」といった単純な計算方式は採用されません。
「店舗」の立退料は、通常は、以下で説明する「用対連基準」に基づいて個別に算定されるため、賃料を基準にした説明は妥当とは言えません。
(2)過去の裁判例は参考になるのか?
店舗の立退料は個別の算定が必要ですが、店舗の種類や利用方法が同じであれば、同じような要素で算定されることになります。
したがって、「過去の裁判例がいくらだから、今回の立退料はいくらである」と単純に結論づけるのは早計ですが、交渉の際に「現実的な相場観」を持つための重要な参考資料にはなります。
3 【弁護士解説】店舗の立退料の正しい計算方法|「用対連基準」を解説
店舗の立退料は、実務上、中央用地対策連絡協議会が定める「用対連基準・細則」に基づき算定されることが一般的です。
店舗の立退料は、以下の3つの補償から構成されます。

(1)借家権価格の補償
借家権価格の補償は、主に以下の要素を積算するのが原則です。
・差額賃料:標準家賃と現行家賃の差×2~4年程度
・一時金:敷金・礼金・権利金等の賃料前払的性質の費用
「賃料差額法による算定」「差額方式」と呼ばれる方式がこれに当たります。
また、不動産鑑定評価基準を参考に「控除方式」で算定されることもあります。
「借家権価格の補償=借地権価格の一定割合の額の補償」ではない
借家権価格の補償として、借地権価格(更地価格の6割~7割)の30%程度の金額が支払われるべきと説明されることがあります。
これは「割合方式」と呼ばれる計算方法で、借家権の取引慣行がある場合は参照する場合があります。
しかしながら、借家権の取引慣行は通常は認められませんので、割合方式のみで算定するのは妥当性を欠くことが多いでしょう。
(2)移転費用等に対する補償
次に、移転費用等に対する補償は、移転実費と工作物補償に分けることができます。
・移転実費:引越業者の費用、借家の際に支払う仲介手数料、移転通知費用などが挙げられます。
・工作物補償:内装の造作に要する費用が挙げられます。再調達した場合の価格に、経過年数と耐用年数を踏まえた再築補償率を乗じて算定されます。
(3)営業上の損失等に対する補償
店舗の立ち退きの場合は、移転に伴う営業損失が金額的に大きくなります。
営業上の損失に対する補償内容としては、「営業休止補償」「営業廃止補償」「仮営業の補償」「営業規模縮小補償」があります。
営業休止補償(最も一般的)
通常は、営業継続を前提とする営業休止補償がメインの補償となります。
そして、営業休止補償には、固定経費、従業員に対する休業手当相当額、休業期間中の収益減、得意先喪失による損失などが含まれます。
営業休止補償(厳格に判断される)
営業を廃止する場合には「営業廃止補償」の話になりますが、営業を廃止せざるを得ないかは厳しく判断されます。
4 店舗の立退料の交渉ポイント
店舗の立退料に関する交渉を有利に進めるためのポイントは次の通りです。
(1)賃貸人側に正当事由があるかをまず確認する
そもそも、正当事由が認められなければ立退きに応じる必要はありません。
まずは、賃貸人が主張する立ち退き理由(老朽化、耐震性など)について、耐震診断の結果や耐震補強工事の費用などを具体的に確認します。
なお、裁判所は、「耐震性不足」だけでなく、現在の使用状況の経済的合理性なども踏まえて総合判断するため、耐震性を確認した後、その他の事情も検討が必要となります。
(2)移転費用、営業損失等を具体的に算出する
立退きによって生じる損害は、以下のとおり多岐にわたります。
・新店舗の内装工事費
・移転による集客力低下
・休業期間中の売上減少
・従業員への休業手当相当額 など
見積書・売上データ・会計書類などを元に数値化し、「立退きにより具体的にこれだけの損害が発生する」という根拠を示すことが重要です。
(3)裁判例から「現実的な相場感」を把握する
店舗の立退料には明確な基準はありませんが、本記事に示したような過去の裁判例から一定の「相場感」は把握できます。
過去の事例などを参考にすれば、請求できる金額の現実的な範囲を見定めることができます。
(4)重要なやり取りは記録に残す
交渉過程のメール、書面は、裁判になった場合の重要な証拠となります。
全てを証拠に残すとかえって交渉が硬直化するデメリットがありますが、重要な内容は記録に残しましょう。
(5)専門家(弁護士)のサポートを受ける
店舗の立ち退きは、「補償項目が多い」「計算が複雑」「感情的対立」が起こりやすいため、第三者の専門家によるサポートが不可欠です。
特に、店舗の立退きを求めてくる賃貸人側は多くのケースで既に弁護士に相談しています。適切な立退料を獲得するためには、こちらも専門家のサポートを受けるべきです。
5 よくあるQ&A
用対連基準に沿って立退料を計算しないといけませんか?
店舗の立退料については、裁判所の鑑定でも用対連基準に依拠して判断がなされています。
そのため、賃借人側も当該基準に即して協議することで結果的に話が進みやすいと思われます。
精神的な苦痛に対する慰謝料の支払いはないのでしょうか?
精神的苦痛に対する慰謝料は認められないケースがほとんどです。
ただし、具体的な嫌がらせなどがあれば、その事情によっては交渉は可能です。
立退料を増額すれば立退きは認められますか?
立退料を増額すれば正当事由が認められるわけではありません。
あくまで立退料は補完的要素にすぎないため、賃貸人の建物使用の必要性が低い場合には、立退料の判断に立ち入ることなく、請求が棄却されます。
建物の老朽化、耐震性不足などの事情は立退料の額に影響しますか?
影響します。
建物が老朽化しており、耐震性などに問題があって、耐震補強工事に高額な費用が掛かるといった事情は、立退料の減額する事情となります。
6 まとめ|数百万円単位で損しないために!店舗の立退き交渉は弁護士にご相談ください
店舗の立退料は、住居の場合と異なり相場が明確ではなく、算定方法も高度に専門的です。
用対連基準に基づく算定方法、営業損失の評価など、個人で対応するには非常に大きな負担となり、本来注力すべき業務に支障が生じます。賃貸人側が専門家をつけて交渉をしてくるケースも多く、店舗の運営を続けながら適切な立退料を算定するのは容易ではありません。
ご相談頂ければ、「正当事由」が認められるかどうかの判断、用対連基準に即した適切な立退料の算定、賃貸人側の弁護士との交渉代理などにつきご相談可能で、有利になる交渉戦略を立案します。
数百万円単位で損をしないためにも、ぜひ一度、店舗の立ち退き専門弁護士にご相談ください。

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