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従業員の解雇手続とは?適切な進め方と無効リスクを防ぐポイント【会社側向け】

作成:2025年6月6日 更新:2025年10月21日
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従業員の解雇は、労務問題の中でも特に慎重な対応が求められます。

それは、解雇が無効となった場合、解雇期間中の賃金(「バックペイ」と呼ばれます)を遡って支払う必要があり、重大な金銭的リスクがあるからです。

以下では、実際に従業員の解雇を検討している会社向けに注意点等を解説します。

普通解雇とは?要件や類型を弁護士が解説します。

1 従業員を解雇する前に会社が行うべき対応

解雇はあくまで最終手段であるため、その前段階の対応が極めて重要です。

以下の各対応を一切することなく従業員を解雇すると、裁判で解雇が無効になるリスクが高まります。

従業員解雇前の対応

(1)就業規則、人事上のルール整備

まず、就業規則には解雇事由を具体的に記載する必要があります。

就業規則がない場合でも、民法627条1項に基づき従業員を解雇することは可能です。

しかし、依拠する基準となる就業規則がないため、解雇のハードルが高くなる可能性があります。

また、社員の評価制度などの人事上のルール整備をしておくことも必要です。

人事上のルールに基づいた解雇であれば、狙い撃ちの解雇であるとの疑いを避けられます。

就業規則の作成・届出義務

従業員数が10人以上の場合は、就業規則の作成・届出義務があります。

10人未満の場合は、就業規則の作成・届出義務はありませんが、従業員の解雇を行う場合を考えると作成しておいた方が望ましいといえます。

直ちに解雇をしたい場合

就業規則や人事上のルールを整備する時間がない(すぐに従業員を解雇したい)場合は、現状で対応するしかありませんが、結果として解雇が無効となりバックペイの負担が残るという事態は避けなければなりません。

ルール整備等が不十分な状態でも今すぐ従業員を解雇したいという場合、少なくとも弁護士に事前に相談をすべきでしょう。

(2)段階的な指導、改善の機会の付与

勤務態度不良や能力不足が問題であれば、まずは注意・指導から始める必要があります。

段階的な指導を経ず、改善の機会を与えずに従業員を解雇した場合、無効となるリスクが高まります。

一度の指導等では足りない場合が多く、複数回の改善指導の記録を残すことが重要です。裁判となった場合は、関連するメールの送信履歴や、上司とのやり取り、日報の記録なども証拠として有効です。

指導や改善の機会の付与が不要となるケース

問題行動等が、本人の性格や思考傾向に基づくもので、根本的な問題の解決が困難な場合などは、改善の機会等が不要とされる場合があります(大阪地方裁判所令和3年5月27日判決など)。

また、意図的に会社に混乱や損害を与えようとして問題行動を行った場合なども、改善の機会等が不要とされる場合があります(東京地裁平成28年1月25日判決など)。

(3)従業員の指導記録を残す方法

「指導記録」は、書面(改善指示書、注意書、始末書、面談記録など)やメールなどの記録に残る形で行うべきです。

仮に、口頭の注意だと、後に「そんな指導を受けていない」と揉める可能性があるからです。

ただし、解雇直前に「指導記録」を作成すると、解雇のために急遽準備したとの疑いが生じます。

そのため、指導記録は、適時適切なタイミングで作成する必要があります。

指導記録の具体的内容

指導記録の内容は、次のような点に注意して残す必要があります。

・問題行動等のあった日時や期間

・従業員の問題行動等の内容

・指導(改善を求める内容)の具体的な内容

改善指示書の例

改善指示書

 貴殿は以下の点について不十分と認められますので、改善を求めるよう指示します。

第1 改善を求める事項

1 改善を求める理由

 20XX年X月X日から同年Y月Y日までの間の業務に関し、指示された業務内容につき、指定された期限を順守しなかったこと。

2 改善を求める内容

 会社が指示した優先度に従って、優先業務遂行に努めること。仮に指定された期限までの業務が間に合わないことが判明した場合には、余裕をもって速やかに上司に報告すること。

(4)配置転換を検討すべきケースと注意点

従業員に与えている業務内容次第では、配置転換を検討することも必要となります。

例えば、能力不足の場合は、別の部署に配属するという配置転換を行い、異なる上司のもとで指導等を受けたにも関わらず、配置転換前の問題が改善されないといった状況であれば、解雇が有効となる可能性が高まります。

また、私傷病の怪我で肉体労働が出来なくなった者に対し、事務作業を担当させるという配置転換をしたものの、事務作業が一切できないという状況であれば、解雇が有効となる可能性が高まります。

配置転換を行う場合の注意点

必要性のない配置転換は、不当な動機・目的に基づくものとして無効となります。

例えば、「追い出し部屋」への異動や、不要な「単純作業」を行う業務を担当させるような配置転換は無効となる代表例です。

無効な配置転換とならないよう、配置転換の内容は実質的に検討が必要です。

2 従業員を解雇する際の基本的な手順

以下は、実際に従業員を解雇する際の基本的な手順です。

状況に応じて個別の対応は必要ですが、押さえるべきポイントは共通しています。

従業員を解雇する際の流れ

(1)解雇理由の明確化と証拠の整理

解雇の有効性を争われる場合、解雇に関する理由を説明する必要があります。

そのため、解雇に先立って、解雇理由を明確にし、関連する証拠を整理しておく必要があります。

まずは、事実関係を十分に確認し、関係者からの事情聴取を含めて証拠の収集、整理を行いましょう。

(2)就業規則との整合性を確認

次に、整理した解雇理由が就業規則上の解雇事由に該当しているかどうか確認します。

ただし、解雇事由は抽象的に定められているのが通常で、就業規則上の文言に該当するかを形式的に検討するだけでは不十分です。

解雇理由が解雇に値するほど重大なものかという観点から検討が必要な場合があります。

(3)事前の説明・弁明の機会の付与

実務上は解雇を行う前に、従業員に対して解雇理由の説明と弁明の機会を付与します。

なぜなら、手続の適正さは、解雇の有効性を判断する上で考慮され得るからです。

弁明の機会を与える通知書の例

そのため、特段の事情のない限り、次のような書面等で弁明の機会を与えましょう。

通知書

貴殿の下記行為は、当社就業規則第★条の解雇事由に該当します。
当社は、貴殿の下記行為について解雇処分を検討しています。

つきましては、貴殿に弁明すべき事項があれば、下記の要領に従って弁明をしてください。

1 貴殿の就業規則第★条の解雇事由に該当する行為

●●●(解雇事由に該当する行為を記載)

2 上記「1」記載の事実について、弁明すべき事項があれば、書面を作成して当社に提出してください。

弁明書の提出期限 20XX年X月X日

(4)解雇通知と解雇予告

最後に、以上のような手順を経て、解雇通知書を作成して交付します。

解雇は、解雇を行う30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが必要です。

解雇予告手当等のルールに反しても解雇も直ちに無効となるわけではありません。ただし、基本的なルールであるため、解雇全体が正しくステップを踏んで行われたのか疑われる原因になります。

3 個別の対応の注意点

(1)精神不調者に対する対応について

精神不調者に対する対応は、より一層の注意が必要となります。

無断欠勤を続けていた精神不調者に対する懲戒処分を行った事案で、次のような判断がされた例があります。

「使用者である上告人としては(中略),精神科医による健康診断を実施するなどした上で(中略),その診断結果等に応じて,必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し,その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり,このような対応を採ることなく,(中略)直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは,精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。」(最高裁平成24年4月27日第二小法廷判決)

同判例は懲戒処分の事案ですが、解雇の場合にも同趣旨の判断がなされる可能性があります。

そこで、実務的には、精神不調を解雇理由とする場合は、一定期間の休職等を命ずることも選択肢に入れて検討する必要があります。

4 従業員解雇トラブルを防ぐために会社がとるべき対策

(1)合意退職の活用

解雇ではなく、「退職勧奨」による自主的な退職(合意退職)を促す方がトラブルは避けられます。

自主的な退職に従業員が応じる場合は、書面で「退職合意書」を取り交わします。

ただし、強引に退職合意書を取り交わすと、合意の有効性につき事後的に争いになる可能性があります。

そのため、退職合意書を取り交わす際には、退職の時期、理由、退職金の有無等を丁寧に説明する必要があります。

(2)弁護士への事前相談

解雇前に労務に詳しい専門家に相談しておくことが後の紛争の予防となります。

そのため、日常的に顧問弁護士などに相談できる体制を取っておくことをお勧めします。

5 よくある質問(Q&A)

(1)解雇を行う前に行うべき事項について

注意指導を行わない解雇は違法ですか?

解雇理由によります。
まず、能力不足や、協調性が欠如していることなどを理由とする解雇の場合は違法となる可能性が高いです。
他方で、注意指導がなじまない「経歴詐称」や「刑事事件」を問題とする解雇の場合には、必ずしも注意や指導は挟まなくても足ります。

従業員に対する指導等はどの程度行えばよいですか?

1,2回程度の指導では不十分と判断される可能性があります。
また、解雇する直前に複数回指導を行っても、解雇理由を作り出すための不当な指導と判断される可能性もあります。
そのため、日常的に、書面の形で指導等の記録を残しておくことが重要です。

指導、評価記録の保存方法はどのようにすれば良いですか?

行った指導等の日付が分かるような形にすべきです。
指導であれば、日付が入った「指導記録」に従業員から署名をもらっておくとよいです。
従業員に開示することが予定されていない文書(内部文書)は、PDFの形で残しておくことで作成日を保存することが出来ます。

小規模な会社であるため、配置転換が難しいのですが、必ずしなければなりませんか?

配置転換を行わなければ必ず違法となるわけではありません。
会社の規模、対象従業員が行える業務内容等を踏まえて、必要な配置転換を求められる場合があるということです。

(2)解雇の実行段階に関して

解雇理由の明確化の作業はどのように行えばよいですか?

まずは、過去の指導状況や対象従業員の問題行動等を洗い出します。
その後、就業規則の文言に該当しそうな事実関係をまとめます。
他の従業員からの事情を聴取した場合には、その日付、聴取内容を記録に残します。
その上で、就業規則のどの規定に該当するかをまとめる作業が必要となります。
会社がまとめた内容を弁護士にチェックしてもらうことも可能です。

予告手当を支払えば、解雇は有効となりますか?

予告手当は、解雇予告と並ぶ、解雇を行う上での最低限の「手続的なルール」に過ぎません。
そのため、解雇の有効性は別に判断されます。
予告手当を支払っても、解雇が無効となることはあります。

(3)リスクに関して

解雇が違法となった場合に金銭的にどれくらいのリスクがありますか?

解雇を言い渡した後の賃金相当額を支払う必要があります。
仮に、解雇に関する争いが1年間続いたらその間の賃金相当分(月給30万円であれば1年分の給料)を遡って支払う必要が生じます。

退職合意書で必須の内容はありますか?

まず「退職日」を記載する必要があります。
また、離職票の離職理由の関係で会社都合か自己都合かを決める必要があります。
そして、一番重要なのは「清算条項」です。「会社と労働者との間に何らの債権債務がない」ことを確認する文言を設ける必要があります。

6 まとめ

解雇は、対応を誤ると無効や損害賠償請求につながる重大なリスクがあります。

特に、解雇理由の整理、指導履歴の保存、通知書の文面作成など、事前準備には法的知識が必要です。

弁護士に相談することで、

・解雇の有効性を事前に確認できる

・リスクを減らした手順を設計できる

・訴訟、労働審判への対応方針を早期に立てられる
などのメリットがあります。

「解雇を検討している段階」からの相談可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

解雇の有効性を踏まえた最適な対応方法をご提案します。

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