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懲戒解雇とは?要件や懲戒処分の類型ごとに弁護士が詳しく解説

作成:2025年1月29日 更新:2025年12月19日
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懲戒解雇は、従業員の重大な非行等を理由に行う最も重い処分であり、普通解雇よりも厳格な要件を満たす必要があります。

本記事では、懲戒解雇の要件について、具体的な類型ごとに分けて弁護士がわかりやすく解説します。

懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは、従業員の企業秩序違反などに対して行われる制裁罰としての解雇です。

企業秩序違反の場合の制裁罰であるため、行使には懲戒事由に該当する行為(企業秩序違反)の存在が必要です。

「従業員の能力不足」や「会社の経営不振」などは企業秩序違反ではないため、通常は懲戒解雇の対象とはならず、普通解雇の対象となります。

そして、懲戒解雇は、退職金の不支給など労働者にとって不利益な結果を伴うため、裁判ではその要件が厳しく判断されます。

懲戒処分の種類と懲戒処分の位置づけ

懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重い処分です。

企業は違反行為の内容や程度に応じて、懲戒処分を選択します。

処分の種類内容処分の重さ主な適用例
戒告・けん責書面等で注意・反省を促す軽い軽微な規定違反、遅刻
減給給与の一部を減額無断欠勤、業務命令違反
降格・出勤停止役職等引き下げ、出勤停止中程度規律違反が改善されない場合
諭旨解雇退職を勧告し自主退職しない場合に解雇背信行為だが情状酌量の余地あり
懲戒解雇即時解雇・退職金不支給重い重大な背信行為など

懲戒解雇の要件(要件ごとのポイント)

懲戒解雇が有効と認められるためには、最低限、次の3つの要件を満たす必要があります。

これらを一つでも欠く場合、懲戒解雇は無効となります。

懲戒解雇の要件

(1)就業規則に懲戒規定があり、周知されていること

就業規則上の懲戒規定の存在

懲戒解雇を行うためには、就業規則に懲戒の種別と事由が定められていることが必要です。

具体的には、次のような規定が定められている必要があります。

第●条 懲戒の種類及び程度は、以下のとおりとする。

①けん責 始末書を提出させて、将来を戒める。

(中略)

⑤懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時解雇する。

第★条(懲戒解雇の事由)

従業員が次の各号の一つに該当する場合は、その情状に応じ、懲戒解雇に処する。

①経歴を詐称して雇用されたとき

②正当な理由なく、無断欠勤が7日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき

③非行行為により、会社の名誉・信用を著しく損ない、又は会社に重大な損害を及ぼしたとき

(中略)

⑩その他前各号に準ずる事由があったとき

就業規則の周知

就業規則を作成しても、それを従業員に周知していなければ拘束力が生じません。

イントラネットへの掲載など、従業員が内容を確認できる状態にする必要があります。

実務上、この周知の有無が争点となるケースも多いため、注意が必要です。

なお、裁判例では、クラウド上で保管している場合でも周知が肯定されており(東京地裁令和6年8月16日判決)、紙媒体の就業規則を準備することは必須ではありません。

(2)(就業規則上の)懲戒事由に該当すること

就業規則違反と懲戒事由該当性の区別

就業規則の定め方にもよりますが、就業規則上の規定違反と、懲戒事由該当性の話は区別する必要があります。

つまり、就業規則上の特定の規定(例えば服務規律違反)に違反したとしても、それが懲戒事由として定められていなければ、そのことを理由に懲戒解雇することはできません。

就業規則上の懲戒事由の限定解釈

懲戒事由は抽象的に定められるため、裁判では限定的に解釈される傾向にあります。

例えば、「経歴を詐称したとき」との規定は、すべての経歴は対象になりません。通常は、「学歴」「犯罪歴」など、職務上重要な経歴に限定されます。

したがって、形式的に就業規則上の懲戒事由に該当しても、裁判では懲戒事由に該当しないと判断され、無効となる可能性があります。

後から懲戒事由を付け足すことには注意が必要

また、懲戒解雇当時に会社側が認識していなかった従業員の問題行為を、後から懲戒解雇の理由に付け足すことはできません(最高裁平成8年9月26日判決)。

例えば、無断欠勤を理由に懲戒解雇した場合、後から経歴詐称が判明したときは、最初に行った懲戒解雇の理由に経歴詐称を付け足すことはできないということです。

最近の裁判例でも、懲戒解雇等を通知した書面に記載した非違行為に絞って判断がされるなどの例があります(東京地裁令和5年8月9日判決、東京地裁令和5年11月29日判決など)。

(3)懲戒権の濫用にあたらないこと(相当性)

懲戒処分は、労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、社会通念上相当であると認められない場合には無効となります(労働契約法15条)。

(懲戒)
労働契約法第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

他者の処分とのバランス・公平性

過去の他者の処分例と比較して、特定の従業員のみ重い処分を行うことは相当性を欠きます。

つまり、会社における他の懲戒事例と比較して、平等に取り扱う必要があります。

改善の機会の付与、段階的な指導・教育

懲戒解雇が処分として相当であるためには、従業員の企業秩序違反行為に対して、改善の機会を付与したり、段階的な指導・教育が行われていることが必要な場合があります。

指導等がない場合、懲戒解雇が重すぎると判断され、相当性が否定される可能性があります。

適正手続(弁明の機会等の付与)

懲戒処分を行うためには、適正な手続を経る必要があります。

就業規則に一定の手続(弁明の機会等)が定められている場合は、定められた手続を守らなければなりません。

ただし、実務上は、就業規則に一定の手続の定めがなかったとしても、念のため弁明の機会は付与するのが通常です。

懲戒解雇の代表的な理由・類型

(1)犯罪行為

具体例

犯罪行為は、懲戒解雇の対象になります。

横領(報酬着服、架空発注など)、窃盗、飲酒運転、交通事故、暴行、傷害、強制わいせつ、盗撮などがよく問題となります。

懲戒事由該当性

故意による犯罪行為は、特段の事情のない限り、就業規則上の懲戒事由に該当します。

過失による犯罪行為(交通事故など)は、具体的な状況によります。

なお、被害金額が発生していない(穴埋めがされている)とか、被害額や被害の程度が小さいといった事情があっても、そのことだけで懲戒事由該当性は否定されません。

相当性

犯罪行為は、企業秩序違反として重いため、相当性が肯定されることが多いといえます。

被害者との間で示談が成立した場合や、不起訴処分となった場合でも、懲戒解雇は有効となり得ます。また、犯罪行為に関しては、「改善の機会の付与、段階的な指導・教育」は不要な場合が多いです。

ただし、次の行為内容や逮捕後の状況によっては、懲戒解雇が無効となる場合もあります。

懲戒解雇が無効となった裁判例

・名古屋地裁令和6年8月8日判決

盗撮行為を行い逮捕されたものの、被害者と示談し、逮捕翌日に釈放され、後に不起訴処分となったなどの事実関係の下で相当性が否定され、懲戒解雇が無効となりました。

・東京地裁令和6年3月8日判決

窃盗罪に該当し得る行為(店舗前に配置された販促物を取得)を行ったものの相当性が否定され、懲戒解雇が無効となりました。

多くはありませんが、上記裁判例のように、犯罪行為があっても行為態様やその後の展開によっては相当性が否定される場合もあります。

ポイント

・犯罪行為は懲戒解雇の要件を満たしやすい類型である。

・示談成立・不起訴処分の場合でも懲戒解雇は有効となり得る。

・犯罪行為の行為態様や逮捕後の状況次第では、懲戒解雇が無効となる可能性もある。

(2)無断欠勤

会社の無断欠勤も懲戒解雇が問題となる典型的な例です。

懲戒事由該当性

無断欠勤は、就業規則上の服務規律違反(正当な理由のない欠勤)に該当します。

ただし、無断欠勤の理由、無断欠勤の日数、事後報告の有無などによっては、懲戒事由該当性が否定されることもあります。

また、精神的不調者の無断欠勤については、次の最高裁判例があるため注意が必要です。

裁判例

最二小判平24・4・27労判1055号5頁では、「正当な理由なしに無断欠勤」をすることが就業規則上懲戒事由として定められていました。

裁判所は40日欠勤していた従業員について、就業規則上の懲戒事由である無断欠勤に当たらないと判断しました。

精神的な不調で欠勤している労働者に対しては、精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、必要な場合は治療を進めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべきというのが理由です。

同最高裁の判断は、同事案の事実関係を踏まえた上での判断であるため、一般化はできませんが、考え方として留意しておくべきです。

相当性

1、2回程度の欠勤で、懲戒解雇の相当性が肯定されることは多くありません。

また、無断欠勤それ自体は労働契約上の債務不履行に過ぎず、企業秩序違反と直ちにはいえないため、企業秩序違反といいうる程度に達する必要があります。

次のような点を踏まえて判断されます。

・無断欠勤が会社に損害を与えているか否か

・無断欠勤の理由(精神不調等)が会社側にあるか否か

・事後報告の有無

普通解雇について

無断欠勤は、普通解雇で対処する方が適当な場合もあります。

(3)業務命令違反

具体例

異動などの配置転換命令に違反した場合が挙げられます。

日常的な業務命令違反も懲戒処分の対象となり得ます。ただし、懲戒解雇の要件を満たすのは重大な業務命令違反に限られます。

懲戒事由該当性

職種や勤務地が限定されていない場合、配置転換命令の拒否は、重大な業務命令違反と評価され、懲戒事由に該当する可能性が高い行為です。

日常的な業務命令違反は、それなりの回数の違反があり、その都度適切な指導等がなければ、懲戒事由には当たらず、懲戒解雇の要件を満たさない可能性があります。

相当性

懲戒解雇に先立つ改善の機会の付与、段階的な指導・教育の存在が、重要な場合が多いと考えられます。

(4)機密情報持ち出し

具体例

退職後に利用する目的から、顧客情報や営業秘密を無断で持ち出す場合が例です。

懲戒事由該当性

会社の機密情報の無断での持ち出し行為は、就業規則上の懲戒事由に該当する可能性の高い行為です。

ただし、持ち出した情報の中身、情報の保管状況によっては、懲戒事由該当性が否定される可能性もあります。

次のような点を踏まえて判断されます。

・情報の内容(持ち出したことにより、会社に損害を与えるような情報であるか)

・どのように情報が管理されていたか

・情報の持ち出しについて社内でどのように指導、教育されていたか

相当性

会社の機密情報を無断で持ち出す行為は、会社に対する背信の程度が高いと考えられます。

したがって、相当性が肯定され、懲戒解雇の要件を満たす可能性が十分あります。

(5)SNSトラブル・炎上

具体例

あおり運転、幅寄せなどの交通トラブル、配達員による荷物の破損などの様子がSNSで拡散し、会社の信用・評判に影響を与えたような場合が挙げられます。

懲戒事由該当性

あおり運転、荷物の破損などは、就業規則上の品位保持義務等の規定に違反します。

そして、SNSで情報が拡散した場合の会社が受ける影響を踏まえると、単なる就業規則違反を超えて、懲戒事由に該当する場合もあり得ます。

相当性

SNSによる情報拡散の影響や、情報が残り続けるリスクを考えると、取引先の喪失など企業にとって重大な影響が生じ得る行為であり、1回の行為であっても相当性が肯定される可能性があります。

次のような点を踏まえて判断されます。

・SNSで拡散した具体的な行為の内容

・拡散した情報の範囲

・会社が受けた具体的な損害の有無・程度

・当該規律違反に対する指導、教育の状況

(6)会社備品・車両等の私的利用

具体例

会社の複合機を利用して私的な資料をコピー、社用車の私的利用などが例です。

懲戒事由該当性

勤務時間中に、会社の複合機を利用してコピーする行為は、就業規則上の職務専念義務違反、会社に損害を与える行為違反に該当し得ます。

また、社用車の私的利用は就業規則等で禁止されている場合が多いでしょう。

そして、無断コピーの場合は、会社に印刷費用相当額の損害を、社用車の無断利用の場合は、ガソリン代相当額の損害を会社に与えているので、懲戒事由に該当すると判断される可能性が高いです。

相当性

会社が被った具体的な損害の内容・程度を踏まえて判断する必要がありますが、通常は会社の備品や車両の私的利用程度では、相当性が否定され、懲戒解雇の要件を満たさないことが多いと思われます。

次のような点を踏まえて判断されます。

・備品等の私的利用により会社が被った損害額

・私的利用が職務時間内に行われた否か

・会社が私的利用を明示的に禁止していたか否か

懲戒解雇に関するご相談について

懲戒解雇については、上記の各要件をクリアしてようやく認められるものであり、いくつものハードルが存在します。

要件を1つでも欠けば、懲戒解雇が無効となります。

「このケースで懲戒解雇は有効か?」「処分の手続は誤っていないか?」など、少しでも不安がある方は早めにご相談ください。

弁護士が事実関係の整理から対応方針まで丁寧にサポートします。

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