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残業代の要否を分ける「管理監督者の正しい判断」とは?業種別の確認ポイントも紹介

作成:2025年12月14日 更新:2025年12月14日
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管理監督者に該当すれば、時間外労働・休日労働に対する割増賃金の支払いは免除されます。

一方で、誤った判断により「名ばかり管理職」と扱ってしまうと、数百万円規模の残業代請求や労基署の調査につながるおそれがあります。

本記事では、管理監督者に該当するかどうかの判断基準、管理監督者に関するよくある誤解、業種別の判断ポイント、企業が取るべき実務対応を解説します。

1 管理監督者とは?法律上の位置づけ

管理監督者とは、労働基準法41条2号で規定される労働時間等の規定が適用されない者を指します。

行政解釈だと、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者と示されています(昭和22年9月13日付発基17号、昭和63年3月14日付基発150号)。

管理監督者に該当すると、次の規定等の適用が除外されます。

・時間外労働の割増賃金

・休日労働の割増賃金

ただし、深夜割増(22時〜5時)は管理監督者であっても支払う必要があります。

管理監督者がよく問題となる職種、地位

・マネージャー、エリアマネージャー

・本部長、技術部長、部長、次長、課長

・店長、店長代理、副店長

・料理長、塾の教室長、施設の管理者、センター長

2 管理監督者該当性で考慮される3つの判断要素

「管理職=残業代なし」と誤解されがちですが、「マネージャー」「店長」「部長」の役職を与えているだけでは管理監督者と認められません。

裁判例では、以下の3つの観点を踏まえた勤務実態が重要な判断要素となります。

管理監督者を判断する3つの観点

(1)職務の内容、職責及び責任の程度(経営の関与度)

部門の運営責任を負っているとか、人事評価、採用、懲戒の決定権があるとか、売上予算の立案を行う立場にあるなどの経営面への関与が必要となります。

この観点が一番重要であり、経営の関与度が低い場合には、管理監督者と認められづらいと言えます。

(2)労働時間の裁量の有無

少しでも時間的拘束を受けていれば、管理監督者に当たらないというわけではありません。

ただし、労働時間について、出退勤の時間を自ら決められる、シフトに縛られていないなどのある程度の自由裁量が認められる必要があります。

就業規則や雇用契約書の記載内容は影響するか

就業規則や雇用契約書で、「労働時間の裁量を与える」と記載されていることは自由裁量性を肯定する事情です。

ただし、この点も実態を踏まえて判断がなされるため、休憩時間は就業規則上の時間に取得していたり、私用で外出する場合に上司の許可を得ている必要があるという実態がある場合には、就業規則等の記載内容よりも実態が重視されます。

タイムカードの打刻管理をしている場合は自由裁量がないと判断されるか

タイムカードが導入されているだけでは、自由裁量がないとは言い切れません。

それは、健康管理や深夜残業時間の管理のためにタイムカードを導入することもあるからです。健康管理などのためであれば、タイムカードが導入されていても自由裁量があることを否定されないこともあります。

一方、一般の従業員と同じく労働時間数を把握するために打刻を義務づけられている場合は自由裁量性が否定されやすくなります。

(3)相応しい待遇

高い給与を得ていることは、管理監督者性を肯定する事情となります。

それは、管理監督者は、時間外割増賃金等の支給が免除されているため、その分、時間外割増賃金等の支給分が高い給与を得ていることが必要になるからです。

従業員全体の中で上位何パーセントに位置する報酬を得ているか、他の役職と比較して、どの程度の差があるかを踏まえて比較します。

比較対象の従業員について

従業員全体との比較について、アルバイトやパートが大半を占めている場合には、従業員全体と比較することにあまり意味はありません。

フルタイムで働いている正社員や、他のライン管理職などの立場にある者とそれぞれの労働条件を踏まえて比較する必要があります。

3 管理監督者に関するよくある誤解

(1)「役職がマネージャー・部長・店長=管理監督者」ではない

名刺上の役職だけでは判断されません。特に多店舗展開の業界では、店舗責任者が裁量を持たず、実質は一般社員と同様にシフト勤務をしているケースが目立ちます。

(2)「管理監督者手当を支給=管理監督者」ではない

会社によっては、管理監督者手当という名称の手当を支給しているから、残業代を支払わなくて良い、と誤解しているケースがあります。

管理監督者手当などの支給している手当の名称と、管理監督者該当性は別の話です。

(3)「固定残業代が多い=管理監督者」ではない

「固定残業代を多く払っているから管理職である」という誤解もあります。

固定残業代は、時間外割増賃金の支払いとして行っている場合、時間外割増賃金の発生を認めることを前提に、それをあらかじめ支給するということなので、むしろ管理監督者該当性を社内制度的に否定していると考えられます。

(4)「管理監督者として扱うことを説明していた=管理監督者」ではない

「管理監督者として扱うことを説明していた」から残業代を支払う義務がないという誤解もあります。

しかしながら、労基法上の管理監督者に該当するか勤務実態等から客観的に判断されます。

したがって、管理監督者として扱うことを説明していたとしても、そのことだけで残業代等の支払いを免れられるわけではありません。

裁判例でも同旨の指摘をしているものが存在します(東京地裁令和4年3月23日判決(令和3年(ワ)第17256号))。

(5)「代表者に次ぐ地位にある=管理監督者」ではない

「代表者に次ぐ地位にあるから、管理監督者である」という誤解もあります。

しかしながら、管理監督者が、会社に一人もいないということはあり得ます。

そのため、代表に次ぐ地位にあるという理由から管理監督者と断定することはできません。

裁判例でも、労働者の中に管理監督者に該当する者がいなければならないわけではないと明言しているものがあります(東京地裁令和3年7月14日(平成30年(ワ)第32477号))。

4 業種別の管理監督者該当性の判断ポイント

(1)一般的なポイント

一般的なチェックポイントは次の通りです。

複数個当てはまったら管理監督者に該当しないと判断される可能性があります。

一方で、すべてに当てはまらない場合は、管理監督者に該当する可能性が高いといえるでしょう。

【共通する一般的なチェックポイント】該当すると管理監督性の否定方向の事情

従業員を統括するような地位にあったわけではない(部下がいないなど)

事業方針の決定に関与していない

運営会議等での発言権が限定的

他の従業員の人事評価の決定権限がない

出退勤、休憩について許可が必要である

タイムカードで労働時間の管理をされている

遅刻早退の場合に、賃金が減額、控除されている

雇用契約書や就業規則で労働時間の定めがある

他の従業員と比較して有意な待遇差がない

残業代計算をすると現在の給与額を大幅に上回る

(2)飲食店のケース(店長・料理長など)

上記一般的な注意点のほか、飲食店の場合には、次のような点も考慮する必要があります。

以下のチェックポイントのうち複数に当てはまる場合、管理監督者に該当しないと判断される可能性があります。

【飲食店の場合のチェックポイント】該当すると管理監督性の否定方向の事情

メニューの創作・決定、商品の仕入れ先に関する決定権がない(メニュー等は本部で決定される)

営業時間に関する決定権限がない

他の従業員やパート社員と同様にシフト管理されており、他の従業員のシフトを管理する立場にない

会社から月・年単位の売上目標が定められている

(3)販売店、買取店などの店長のケース(中古車、古物買取など)

中古車販売や、商品の買取店の店長を任されているようなケースでは、次のような点が問題となります。

【販売店、買取店などの店長の場合のチェックポイント】該当すると管理監督性の否定方向の事情

買取権限、発注権限などが限定的である

裁量で決定できる買取金額の上限が決められている

本部の承認を得る必要がある事項が多い

取り扱える商品の選択・決定に関する裁量が小さい

会社から月・年単位の売上目標が定められている

(4)運送業のケース

運送業に関しては、現場作業を行っている人は基本的に管理監督者に当たるケースはまれと思われます。

【運送業の場合のチェックポイント】該当すると管理監督性の否定方向の事情

配車表の作成権限・決済権限がない

車両の購入に関する決定権がない

配送金額の交渉権限・決定権限がない

業務内容は管理業務ではなく、集配・配送等の現場業務が中心である

担当する現場業務は会社から割り振られた業務であり、時間的な自由裁量の余地が乏しい

5 弁護士に相談すべきタイミング

管理監督者制度は、就業規則や賃金体系と密接に関係するため、対応を誤ると無効となったり、紛争につながるおそれがあります。

そのため、特に次のような場合には、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 管理監督者性について従業員から指摘を受けた
  • 労基署から調査が入った
  • 残業代請求を受けた、または受けそうな状況がある

制度の見直しは、就業規則の変更や賃金の変更を伴うため、無効とならないように対応を行う必要があります。

6 まとめ

管理監督者に該当するかどうかは、役職名ではなく、
①職務内容 ②労働時間の裁量 ③待遇の水準
といった実態によって判断されます。

誤った管理職扱いは、残業代請求や労基署対応など重大なトラブルにつながります。企業としては、問題が顕在化する前に、管理監督者の制度を一度整理・確認しておくべきです。

制度設計や紛争対応についてお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。

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