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定期借家契約の店舗の立ち退きで立退料を得られるケースとは?

作成:2025年6月20日 更新:2025年10月22日
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近年、店舗については、定期借家契約が好んで利用されており、「今回の契約期間満了で契約は終了します。定期借家契約だから立退料は支払いません。」という通知を受け、突然の立ち退きを迫られるケースは少なくありません。

しかしながら、定期借家契約であっても、立ち退き料を請求できるケースはあります。

本記事では、定期借家契約の基本と注意点を整理し、立ち退きを求められた際に借主側に立退料が支払われる可能性があるケースを弁護士が解説します。

1 定期借家契約とは

「定期借家契約」とは、契約期間の満了により当然に契約が終了する賃貸借契約のことです。

平成12年3月1日に施行された制度であり、特に店舗物件の契約で利用されています。

通常の「普通借家契約」では、契約期間が満了しても自動的に終了せず、貸主が契約を終了させるには正当事由が必要です。

これに対して、「定期借家契約」では正当事由が不要であり、期間満了で自動的に終了します。つまり、定期借家契約では、通常は「立退料」を支払う必要がありません。

普通借家契約だと数百万円から数千万円単位の立退料が発生することもある店舗賃貸では、貸主側が定期借家契約を好んで利用します。

2 定期借家契約の要件

定期借家契約は、正当事由なく立ち退き要求が可能であり、貸主に有利な制度です。

その反面、法律上は厳格な要件が定められています。

定期借家契約の要件

(1)書面等によって契約をすること

まず、定期借家契約は書面又は電磁的記録による契約でなければなりません。

口頭で「定期借家でお願いします」と合意しても無効です。

従来は、書面での契約しかできませんでしたが、令和4年の改正で電子契約も認められました。

(2)契約書とは別個独立の事前説明書面を交付・送信すること

契約締結前に、「この契約は更新がなく、期間の満了により終了する」旨記載した契約書とは別個独立の事前説明書面を交付する必要があります。

単に賃貸借契約書に定期借家契約と書くだけでは足りません。

電磁的記録の方法による事前説明

令和4年の法改正により、賃借人の承諾を条件に、事前説明書面を電磁的方法により提供することも認められています。

電磁的記録の方法としては、電子メール等を送信する方法、アップロードしたファイルをダウンロードさせる方法、情報を記録した媒体を交付する方法があります。

重要事項説明書は事前説明書面となり得るか

別の見解もありますが、重要事項説明書は、事前説明書面とは認められないと考えられます。

(3)口頭等により定期借家契約の説明を行うこと

また、貸主(又は仲介業者)は、契約前に口頭等による説明を行う必要があります。

この説明も契約締結の前に行う必要があります。

そして、当該説明が不十分だと、定期借家契約自体が無効と判断される可能性があります。

(4)契約期間満了の1年前から6か月前までに通知をすること

定期借家契約は、期間満了の1年前から6か月前までに終了通知を行う必要があります。

この期間を経過すると、通知日から6か月経過するまで契約が終了しません(借地借家法38条4項ただし書)。

ただし、「契約期間終期後」の終了通知は、無効とされる場合もあるため、注意が必要です。

定期借家の立ち退きの終了通知の期間

3 要件に関する注意点

(1)説明が形式的なものにとどまると不十分

単に契約書の文言を読み上げるだけでは「説明した」とは言えない場合があり、口頭等の説明は、賃借人が定期借家契約の内容を理解できるように行う必要があります。

説明が不十分な場合は、定期借家契約が無効となる可能性があります。

説明の程度に関する裁判例

単に契約の更新がなく期間満了により終了する旨の記載を読み上げるだけでは足りないと判断した裁判例があります(東京地裁令和5年2月28日判決)。

この事例では、次のような判断がされています。

東京地裁令和5年2月28日判決

「説明」とは、口頭での説明を要するものと解され、かつ、その内容は、単に契約の更新がなく期間満了により終了する旨の記載を読み上げるだけでは足りず、賃借人が理解してしかるべき程度、すなわち、定期建物賃貸借契約においては法定更新の制度及び更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されるという特殊性の概要と、その結果、当該賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて、賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要するものと解するのが相当である。

電磁的記録による説明の場合

電磁的記録による事前説明を行う場合は、メール等の内容も総合的に考慮して説明の程度として十分か判断されます。

(2)契約期間終期の後に終了通知がされた場合

契約期間終期の後の終了通知では賃借人に対抗できないとする見解があります。

ただし、裁判では、契約期間終期後に通知された場合でも賃借人に対抗できるとされた例もあります。

契約終期後の通知に関する裁判例

例えば、東京地裁令和元年12月6日では、契約期間終期の約1か月半後になされた終了通知は有効であり、当該通知から6か月経過後に契約を終了できるとされました。

(3)終了通知は行ったが期間経過後も使用を継続していた場合

一方で、終了通知が期間内にされていても明け渡しが認められない場合があります。

例えば、契約期間経過後も、定期借家の再契約をせず使用継続を認めていたような場合です。

継続使用に関する裁判例

例えば、東京地裁平成29年11月22日判決では、定期借家契約の期間経過後に賃借人が建物の使用を継続し、賃貸人も異議なく賃料を受領しているような場合には、黙示的に新たな普通建物賃貸借契約が締結されると判断されました。

4 再契約が繰り返されていた場合に立ち退きを拒否できるか

定期借家契約は、更新が予定されていない契約です。

しかしながら、再契約という形で契約を繰り返し延長することは禁止されていません。

したがって、再契約が繰り返されていても、そのことだけで定期借家契約として無効となるわけではありません。

5 普通借家から定期借家への切り替えの有効性

普通借家契約から定期借家契約への切り替えが行われる場合もあります。

特に建て替えを予定している建物などでは、貸主側から再契約の際に「定期借家契約に切り替えましょう」と持ち掛けられることがあります。

中には、立退料の支払いが不要になることを伏せて、賃料減額などをエサにして切り替えを迫る悪質なケースもあります。

このような場合、仮に書面の取り交わしに応じてしまっても、説明が不十分であれば定期借家契約への切り替えの無効を主張でき、立ち退きを拒否できる可能性があります。

6 定期借家契約でも立退料を求めることができるケース

定期借家契約は、原則として立退料の支払いを受けることが出来ません。

しかしながら、以下のようなケースでは、交渉によって立退料を得られる可能性があります。

定期借家の立ち退き料を求めることが出来る場合

(1)手続・形式に不備がある場合

上記のように定期借家契約は、手続や形式が厳格に定められています。

手続や形式に不備がある場合には、定期借家契約は無効となり、普通借家契約として立ち退きを拒絶したり、立退料を請求できます。

店舗の立ち退き料の相場はいくら?裁判例と交渉の実務から解説します。

(2)説明が不十分な場合

契約前の説明義務を果たしていない場合も、同様に無効主張が可能です。

ただし、言った言わないの話になりがちで、客観的証拠がない場合もあります。

供述しか証拠がない場合には、弁護士に事前に敗訴リスクに関して相談しておくべきです。

(3)期間内解約の場合

貸主が期間満了前に解約(期間内解約)を求める場合、合意解除が必要です。

そのため、期間内解約の場合は、立退料の交渉の余地が大きいといえます。

ただし、物件の規模や契約の残存期間等次第では、賃貸人側が期間内解約を諦めることもあります。

(4)契約期間後も継続使用している場合

契約期間満了後も継続使用している場合、普通借家契約の合意が認定される可能性があります。

上記「3」「(3)」の裁判例などがこのケースの例です。

(5)信義則に反する場合

信義則上、立ち退きを求めることが不合理と判断される場合もあります。

例えば、再契約を前提とした特殊な特約が存在する場合や、再契約を期待させる言動があった場合はこのような主張が認められる可能性があります。

7 定期借家契約の立ち退きに関するよくある質問(Q&A)

再契約が繰り返されていたのに突然再契約しないと言われました。拒否できますか?

原則拒否できませんが、説明不足や信義則違反があれば無効主張の余地があります。

契約の際に「次回も再契約するので安心してください」と言われていたのですが、明け渡す必要がありますか。

発言内容、経緯を具体的に立証できれば、明け渡しを拒否できる可能性があります。
メールなどの客観的な証拠が存在することが望ましいですが、証拠がない場合でも争う余地はあります。
具体的なケースごとに結論は異なりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

立ち退きに応じる場合、原状回復費用の免除をしてもらう交渉は可能ですか。

定期借家契約の有効性を争う余地があれば、立退料交渉の一環として十分にあります。

弁護士に交渉を相談するタイミングは?

通知が届いた段階、再契約を断られた段階で早めに相談するのが理想です
定期借家契約の立ち退きの問題は、タイミング次第で結果が大きく変わることがあります。

ご自身の定期借家契約のケースで立ち退きを拒絶したり、立退料を請求できるかは、契約書の内容や説明の有無など細かな事情によって異なります。
少しでも疑問があれば、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

8 まとめ

定期借家契約の店舗では、原則として期間満了で退去義務が生じ、立ち退きに応じる必要があります。

しかし、

・契約手続の不備

・説明不足

・信義則違反

などがある場合には、定期借家契約が無効とされ、立退料を請求できるケースもあります。

つまり、「定期借家だから立退料はもらえない」と言われても、実際には交渉次第で結果が変わる可能性があります。

契約書や過去のやりとりを確認するだけでも、主張できるポイントが見つかることがあります。

立ち退き通知を受けた際は、まずは弁護士に相談して、ご自身のケースで交渉できるか確認しましょう。

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