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違法建築を理由に退去を求められたら?入居者が知っておくべき法的知識と対処法

作成:2025年6月5日 更新:2025年10月25日
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違法建築を理由に立ち退きを求められた場合でも、入居者が退去しなければならないケースはそれほど多くありません。

それは、違法建築であることに、通常は入居者は関与していないからです。

交渉方法を誤らなければ妥当な範囲内で立退料の請求を行うことができます。

本記事では、違法建築を理由とする立ち退きに関する法的知識と対応方法について解説します。

1 違法建築を理由とする立ち退き要求の法的根拠

オーナー側が入居者に対して立ち退きを求める法的根拠は、借地借家法に基づく「更新拒絶」又は「解約申入れ」です。

そして、「更新拒絶」でも「解約申入れ」でも、契約を終了させるためには「正当事由」が必要となります。

違法建築物であるか否かは、この正当事由を満たすか否かで意味を持つ場合があるため、オーナー側は違法建築であることを立ち退きを求める理由として主張することがあります。

2 「違法建築物」とは?基本的な定義と具体例

違法建築物とは、建築基準法などの法令に違反する建築物のことを指します。

建物は、各種法令が関わっており、違法建築物の内容は多種多様です。

以下、立ち退きの理由として問題となりやすい違法建築物でよく問題となる例と、違法建築物でない例(既存不適格建物等)を紹介します。

(1)立ち退きの理由として問題となりやすい違法建築物

立ち退きの理由として、次のような点が違法建築であると言及されることがあります。

違法建築で立ち退きを求める場合の例

①無許可建築・増改築の建物

建物を建てる場合には、建築確認申請をして、審査を受ける必要があります。

一定の例外はありますが、建築後に増改築する場合でも確認申請を行う必要があります。

このような確認申請を受けずに建築した、増改築した場合が違法建築物の代表例です。

立ち退きが行われる共同住宅の場合は、建築後の無断増改築がよく問題となります。

②容積率違反の建物

容積率とは、建物の延べ面積の敷地面積に対する割合です。

容積率の最高限度が定められている場合、当該限度を超えた建物は違法建築物となります。

容積率違反は、完了検査が終わった後に増改築を行った場合によく問題となります。無断で増改築することにより、当初許された容積率をオーバーすることが多いからです。

③完了検査を受けていない建物

建物の建築工事が完了した場合、完了検査を受ける必要があります。

そして、完了検査に合格した場合には、検査済証が交付されます。

しかしながら、新築時に建物の完了検査を受けておらず、検査済証のない建物も存在します。

完了検査を受けていない場合は、建築基準法に違反しており違法建築物に該当します。

④防火設備等が基準に適合しない建物

建築基準法の規定により、一定の性能の防火設備等を設ける必要がある場合があります。

しかし、施工業者のミスなどにより本来使用すべき材料が使用されていない場合があります。

このような必要な性能の材料等が使用されていない場合、違法建築物に該当します。

⑤消防法違反の建物

消防法関連では、自動火災報知設備や屋内消火栓設備未設置の違反がよく問題となります。

⑥是正勧告、是正命令を受けた建物

地方公共団体から是正勧告、是正命令がされることもあります。

是正勧告、是正命令が行われる理由は様々ですが、市区町村が勧告に至っている場合、何らかの法令に違反する可能性が高いです。

ただし、時には「建築基準法違反のおそれ」などの理由で、通知するケースもあります。

違法建築を理由に立ち退きを求められた際、オーナーから是正命令等の話があった場合、その具体的内容を確認する必要があります。

(2)違法建築物に該当しない建物

既存不適格建物(旧耐震基準による建物)

旧耐震基準とは、昭和56年5月31日以前の耐震基準のことです。

旧耐震基準の建物は、新耐震基準の建物と比較すれば十分な耐震性を備えていませんが、違法建築物というわけではありません(既存不適格建物と呼ばれます)。

したがって、旧耐震基準の建物というだけで正当事由が認められるわけではありません。

既存不適格建物(接道義務違反の建物)

建築基準法上、建物の敷地は道路に2メートル以上接していなければならず(詳細や例外は法律で細かく規定)、これを接道義務といいます。

これから建物を建築する場合は、接道義務の規定を守らなければ建築できません。

一方で、接道義務の規定が設けられるよりも前から建築されている建物の中には、接道義務を果たしていない建物も存在します。

これも既存不適格建物の一種であり、違法建築物ではありません。

また、接道義務は、建物そのもの老朽化度合いとは無関係であり、単独で正当事由の理由には通常はなりません。

法定耐用年数を経過した建物

建物については、法定耐用年数と言われる期間があります。

これは税務上の計算で使う期間で、建物の種類、構造、用途によって一律に法定されています。

法定耐用年数は個別の建物の老朽化具合を示す指標ではなく、法定耐用年数を超えたら違法建築物になるというわけでもありません。

したがって、法定耐用年数を経過しただけで正当事由が認められるわけではありません。

なお、よく言及される法定耐用年数は以下の通りです。

住宅用鉄筋コンクリート造:47年

住宅用木造建物:22年

店舗用鉄筋コンクリート造:39年

店舗用木造建物:22年

3 違法建築物と正当事由の関係

違法建築物に該当することは、立退きを求める正当事由の1つの理由となり得ます。

しかしながら、違法建築物というだけで、正当事由を満たすケースは多くはありません。

正当事由は、賃貸借契約の終了という効果をもたらすものであるため、重大かつ是正困難な違法建築でなければ正当事由を認める事情にはならない事が多いと思われます。

なお、正当事由は総合的に判断されるので、その他の理由から正当事由が肯定される場合があることには留意が必要です。

(1)無断建築・増改築の場合

共同住宅の場合、建物自体の建築確認申請をしていないことは、あまりありません。

一方で、もともとベランダ部分だった場所にプレハブを増築する、駐車場部分を増築するなど、一部だけ建築確認申請をせず増改築していることは割とあります。

無断増改築は建築基準法違反ですが、違反部分を撤去等すれば違反状態は解消できます。

したがって、違反部分の撤去等が可能であれば、正当事由の決定的な理由とはならないでしょう。

ただし、以下の裁判例のように、その他の事情も踏まえて正当事由が肯定された裁判例もあるため、具体的事案では、その他の事情も総合的に踏まえて判断する必要があります。

無断増築等によって明け渡しが認められた裁判例

・東京地方裁判所令和3年3月25日判決

建築確認の内容と異なる増築により容積率違反が生じたこと、建物が老朽化していること、アスベストが検出されていることなどを理由に明け渡しが認められました。

(2)容積率違反の場合

無断増築が行われた場合には、容積率違反の問題が生じることがよくあります。

仮に、容積率違反の状態となっていても、容積率違反の原因となった増築部分を撤去できれば違反状態は是正されます。

このように是正可能な場合、容積率違反は、正当事由の決定的な理由にはなりません。

(3)完了検査を受けていない場合

国土交通省の資料(第1回建築法体系勉強会(平成23年2月2日開催)配布資料4)によれば、平成10年の完了検査が実施された比率は4割程度であったと報告されています。

そのため、現在建て替えが問題となっている建物は、完了検査を受けていない建物も相当数存在します。

ただし、以下の裁判例のように、完了検査を受けていないことそれだけで正当事由が認められるわけではありません。

建築基準法違反があっても明け渡しが認められなかった裁判例

・東京地裁令和3年3月12日判決

竣工時期が古い建物については、検査済証の交付を受けないことも見受けられ、これによって直ちに解体を要するとは認められないなどと判断し、明け渡しを認めませんでした。

(4)防火設備等が基準に適合しない場合

施工業者の過失などにより、本来使用すべき難燃材料が使用されておらず、建築基準法に違反している場合などがあります。

このような場合でも、それほど高額な費用を掛けずに建築基準法違反の状態が是正できるのであれば、正当事由の決定的な理由にはなりません。

しかしながら、建築基準法違反となったことにつき、オーナー側に責任がなく、補修に多額の費用が掛かる場合には、正当事由を認める方向で考慮される場合もあり得ます。

(5)消防法上の基準を満たしていない建物

消防法違反は個別の工事や処置で違反状態を是正できる場合が少なくありません。

したがって、消防法違反の状態であることが、正当事由の理由となることは多くはないと考えられます。

(6)行政指導、是正命令等の存在

行政から違法建築を理由に行政指導や是正命令が出ていることは、正当事由の一つの理由となり得ます。

ただし、是正命令に応じることが容易な場合、建物全体からみて違反状態が軽微な場合などは、正当事由の決定的な理由とはなりません。

なお、地方公共団体は、「建築基準法違反のおそれ」などの理由で、通知をするケースもあるため、通知内容については十分に確認することが必要です。

4 立退料の内容

違法建築を理由に立ち退きを求められた場合でも、立退料を請求できる可能性があります。

任意に退去に応じる場合でも、立退料の請求は検討すべきでしょう。

居住用建物の場合の立退料の内容としては、以下の費用等が挙げられます。

(1)転居先の初期費用

まず、転居先物件の初期費用は、相当な立退料と認められます。

具体的には、仲介手数料、敷金、礼金、クリーニング費用、鍵交換費用などです。

(2)引越し費用

また、引越し業者の費用も、相当な立退料と認められます。

引越し業者のフルパックの費用が認められるかは場合によると思われます。

(3)転居先の物件との差額賃料

次に、転居先の賃料と現在の賃料との差額賃料が発生する場合には、一定期間の差額賃料が、相当な立退料と認められることがあります。

ただし、平均賃料と比較して高額な差額賃料が生じる場合や、部屋のグレードアップ(1Kから2LDKなど)を伴う場合には、差額賃料全てが当然に認められるわけではない点に注意が必要です。

(4)その他の費用

その他の費用が認められるかは、具体的な事案ごとに判断が分かれます。

ただし、合理的な説明を行うことが出来れば、一切認められないというわけでもありません。

5 違法建築を理由とする立ち退きを求めれた場合の対処法

退去を求められた場合には、以下のステップで冷静に対応しましょう。

退去後の請求では、支払いを拒否される可能性があります。

(1)書面やメールでの通知を求める

まず、退去の要求につき、訪問、電話など記録に残らない形で伝えられた場合は、違法建築の内容を含めて、退去を求める理由を書面で通知するように求めてください。

これにより、オーナー側が主張する違法建築の内容が明確になり、言った言わないという事態を避けることができます。

(2)契約書、重要事項説明書の内容の確認をする

次に、契約書、重要事項説明書の内容に、違法建築物であることの説明があるかを確認します。

また、違法建築物を理由とした解除に関する条項があるか否かを確認します。

(3)退去に応じる必要があるか検討

仮に、契約書で違法建築であることの説明がなされていた場合には、当該記載内容を踏まえて判断する必要があります。

また、違法建築の内容がどの程度のものなのか、是正可能ではないのかを確認・検討する必要があります。

(4)弁護士等法律専門家への相談

ご自身で判断が難しい場合は、弁護士に相談し、オーナー側の主張の妥当性、交渉・訴訟への対応についてアドバイスを受けましょう。

(5)立退料の算定・交渉

仮に退去に応じる場合には、必要な費用の算定を行います。

また、金額だけでなく、退去期限、原状回復義務免除などについてもこのタイミングで交渉します。

(6)合意内容を書面に残す

金額等の交渉がまとまったら、合意内容を書面の形で残す必要があります。

立退料の金額を中心に、退去期限やその他の必要な事項について、合意書に記載してもらいます。 

6 よくある質問(Q&A)

違法建築であっても、家賃は支払い続ける必要がありますか?

違法建築であっても、通常の使用ができている限り賃料の支払い義務は残ります。
賃料の支払いを怠ると、賃料不払を理由に契約を解除されるリスクがあります。
したがって、違法建築物であっても賃料は支払い続けることが無難です。

立退料の金額はどれくらいになりますか?

住居として使用しているか、店舗として使用しているかで大きく異なります。
住居の場合は、実費がベースになりますが、転居先の賃料との差額賃料など理由がつく費用であれば、オーナー側に要求することも可能です。
店舗の場合には、営業利益の喪失や、設備に要する必要などの請求もできる場合があります。
なお、弁護士であれば、増額交渉も可能です。

退去に応じる場合、原状回復義務は免除されますか?

交渉次第で原状回復義務の免除してもらうこともできます。
ただし、当然には免除されないため、合意書を取り交わす際に、原状回復義務の点も確認しておくことが必要です。

オーナー側との交渉を弁護士にお願いすることはできますか?

可能です。
違法建築物であるとの主張に対する対応や、立退料の金額の交渉などを一括で依頼することができ、合意書の内容の確認や、取り交わしなども対応いたします。
ご依頼者様は、基本的には電話やメールで報告等をお待ち頂く形になります。

7 まとめ

違法建築物であることについて、通常は入居者に責任はありません。

そのため、違法建築を理由に立ち退きを求められてもすぐに応じる必要はありません。

また、退去に応じる場合でも、立退料の請求が可能です。

不当な立ち退きや立退料の交渉でお困りの方はぜひ弁護士にご相談ください。

専門家のサポートを受けることで、納得のいく形で問題を解決できる可能性が高まります。

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