普通解雇とは?要件等を具体的類型を踏まえて解説します。
労働契約を会社側から終了させる「普通解雇」は、法律上いくつかの要件を満たす必要があります。
そこで、本記事では普通解雇の要件等を、類型ごとにわかりやすく解説します。
普通解雇とは
普通解雇とは、使用者による労働契約の解約の申入れのことをいいます。
言い換えると、合意ではなく、使用者側から一方的に労働契約を終了させるものです。
そして、普通解雇は、労働契約の「期間の定め」の有無で適用される要件やルールが若干変わります。
「契約社員」「パート」は解雇できない?契約期間の定めの有無に注意

労働契約は、「無期労働契約(期間の定めのない労働契約)」と「有期労働契約(期間の定めのある労働契約)」の二つに分類できます。
解雇は、通常は無期労働契約を解消する場合が想定されています。
有期労働契約の場合は、「普通解雇」の要件ではなく「雇止め」の要件が問題になるのが通常です。
(1)無期労働契約(期間の定めのない労働契約)
「無期労働契約」は、雇用契約書や労働条件通知書で、期間の定めがないという形で合意するか、期間を明示的に設定していない労働契約を指します。
そして、「正社員」は、無期労働契約であることが一般的です。
(2)有期労働契約(期間の定めのある労働契約)
「有期労働契約」は、雇用契約書等で、契約期間を設定している労働契約を指します。
例えば、「契約社員」「嘱託社員」「パートタイマー」などは、有期労働契約であるのが通常です。
有期労働契約の場合は、契約期間満了時に契約終了とすることが多く、これを雇止めと言います。
そして、契約社員やパートタイマーも、理屈上は解雇できますが、通常は雇止めとして紛争になります。
「雇止め」の問題については、以下の記事をご参照下さい。
普通解雇の要件
普通解雇の要件については、労働契約法16条に定めがあります。
そして、同条によると、解雇には客観的合理的理由と社会的相当性が必要です。
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(1)客観的合理的理由
まず、客観的合理的理由は、就業規則等の解雇事由に該当するかという形で判断されます。
第★条(普通解雇)
会社は次の各号の一つに該当する場合に、従業員を解雇する。
① 身体又は精神の障害等により、業務に耐えられないと認められるとき
② 能力不足又は勤務成績不良で就業に適しないと認められたとき
③ 勤務態度が不良で注意しても改善しないとき
④ 協調性を欠き、他の従業員の業務遂行に悪影響を及ぼすとき
⑤ 事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき
⑥ その他会社の従業員として適格性がないとき
ただし、裁判所は就業規則上の解雇事由を厳格に判断する傾向にあります。
例えば、勤務成績不良を理由とする場合は、「単に成績が不良という程度では足らず、それが会社の経営に支障を生ずるなどして会社から排斥すべき程度に達していることを要する」といった具合です。
そのため、労働者の行為や言動が解雇事由に該当するような内容・程度なのかは慎重に見極める必要があります。
なお、解雇事由が軽微な場合、解雇回避措置が必要となることがあります。
解雇回避措置としては、配置転換、労働時間の配慮、休職制度の利用などが挙げられます。
就業規則が存在しない場合
就業規則が存在しない場合でも、民法627条1項に基づき普通解雇を行うことは可能です。裁判例としては、東京地裁令和元年6月10日判決などがあります。
ただし、就業規則を作成していない会社は、解雇手続がきちんとなされていたのか、解雇に至る前に従業員に適切な指導や教育等がなされていたのかを疑われる可能性は残ります。
(2)社会的相当性
社会的相当性は、解雇事由の内容、程度等を踏まえた上で、諸々の事情を総合的に考慮して判断されます。
本人の情状や他の労働者の処分との均衡、会社側の対応等に照らして、解雇が相当でないと認められる場合には、社会的相当性を欠き、無効となります。
考慮要素
具体的には、次のような点が考慮されます。
・本人の情状 反省の態度、過去の勤務態度、年齢等
・他の労働者の処分状況 過去の会社内での他の労働者の処分状況との比較等
・使用者側の対応状況等
普通解雇の手続上のルールについて
普通解雇を行う際の具体的な手続は、法定されていません。
会社によっては、事情聴取や弁明の機会を与えていますが、これらの手続をとらなければ解雇が無効となるわけではありません。
ただし、実務上は、次のような書面を送付して弁明の機会を付与するのが通常です。
通知書
貴殿の下記行為は、当社就業規則第★条の解雇事由に該当します。
そのため、当社は、貴殿の解雇処分を検討しております。
つきましては、弁明すべき事項があれば、下記の要領に従って弁明をしてください。
1 貴殿の就業規則第★条の解雇事由に該当する行為
●●●(解雇事由に該当する行為を記載)
2 上記「1」記載の事実について、弁明すべき事項があれば、書面を作成して当社に提出してください。
弁明書の提出期限 20XX年X月X日
解雇が問題となる具体的類型
以下では、裁判例等で問題となる類型に分けて説明します。
(1)規律違反、勤務態度不良
具体例
業務命令違反、ハラスメント行為、頻繁な遅刻、無断欠勤、勤務態度不良、就業規則違反などが挙げられます。
客観的合理的理由の判断
就業規則で「勤務態度が不良で注意しても改善しないとき」が解雇事由として定められていても、軽微な規律違反では当該解雇事由に該当しないと判断されます。
規律違反、勤務態度不良は、指導、注意の記録が残っているかが重要であり、これらがない場合には客観的合理的理由とならない可能性があります。
裁判例
裁判例で問題となった、規律違反の例は、次のようなものがあります。
①会社のコンピュータのデータを無断削除、無断持ち出し等をした上で、会社の名誉、信用を傷つけるような言動を行った者に対する解雇を有効としたもの(大阪地判平8・9・11労判710号51頁)。
②複数名の部下に対する性的言動を繰り返し、部下の就業環境を著しく害したことを理由とする解雇を有効としたもの(東京地裁平成12年8月29日)。
(2)能力不足
客観的合理的理由の判断
能力不足を理由とする解雇は、どのような能力を期待されて入社したのかが重要です。
また、裁判所は「能力不足の程度が重大なものであるか」「改善の機会を与えたか」「改善の見込みがないのか」という観点を考慮します。
そのため、能力不足を理由とする場合、次のような事情を踏まえて判断する必要があります。
・どのような能力があることを前提に採用されたのか
・改善の機会を与える必要があるのか否か
・実際に与えられた改善の機会、指導教育の状況
職務を特定した採用された場合
特定の能力や一定の経験を踏まえて職務を特定して採用されたにも関わらず、当該職務が遂行ができないという場合には能力不足と言える場合も少なくないでしょう。
また、前職での経歴や経験に関する経歴詐称の問題になる場合もあり得ます。
新卒社員など
一方で、新卒社員や、職務を特定せずに採用された場合は、「能力不足」と言えるためには適切な指導等がなされることが必要です。
指導等がなされていない場合には、解雇が無効となる可能性が高くなります。
そのため、次のような改善指示書などにより指導がなされているかが重要です。
改善指示書
貴殿は以下の点について不十分と認められますので、改善を求めるよう指示します。
第1 改善を求める事項
1 指示された業務内容につき、会社が指示した優先度に従って、指定された期限までの業務遂行に努めること。仮に指定された期限までの業務が間に合わないことが判明した場合には、余裕をもって速やかに上司に報告すること。
2 ●(その他改善を求める事項を記載)
(3)労働能力の喪失(業務上負傷した業務災害の場合)
解雇制限
業務上負傷し、疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、労働基準法19条により解雇が制限され、当該期間中の解雇は当然に無効となります。
ただし、治癒又は症状が固定した後(30日経過後)は普通解雇の要件を満たせば解雇可能です。
客観的合理的理由の判断
就業規則における「①身体又は精神の障害等により、業務に耐えられないと認められるとき」などの文言へ該当し得ます。
ただし、労働災害で負傷したという経緯を踏まえると、症状固定後、会社には当該労働者に訓練的・段階的な就労の機会を付与し、労働能力の回復・向上のための措置を講じることが望まれます。
そのため、段階的な措置を講じることなく行われた場合は、労働能力の喪失が客観的合理的理由とならない可能性があります。
(4)労働能力の喪失(業務外で負傷した私傷病の場合)
解雇制限
まず、私傷病で労働能力を喪失した場合は、労働基準法19条の解雇制限はありません。
客観的合理的理由の判断
就業規則における「①身体又は精神の障害等により、業務に耐えられないと認められるとき」などの文言へ該当性し得ます。
ただし、従業員が労働能力を喪失した後、合理的配慮を行うことなく、直ちに解雇をするような場合には、「社会的相当性」を欠くとして、解雇が無効と判断される可能性が高いでしょう。
したがって、私傷病による場合でも、療養による回復の見込みの有無、改善の機会の付与、配置転換の可否等を踏まえて判断すること必要です。
(5)精神不調(うつ病等)(業務上負傷した業務災害の場合)
業務起因性
まず、精神不調を理由とする解雇も、労働能力喪失の場合と同様、当該精神不調の原因で区別する必要があります。
そして、精神不調の場合は、業務に起因するものか否かが大きな争いとなります。怪我の場合と異なり、業務に起因するか否かが明確ではないからです。
実務上は、与えられた業務内容や業務量、時間外労働の有無・程度などを踏まえて業務起因性が判断されます。
解雇制限
精神不調が業務に起因する場合、労働基準法19条の解雇制限を受けます。
そのため、業務上生じた精神不調等の療養のために休業している期間になされた解雇は当然に無効です。
ただし、治癒又は症状が固定した後(30日経過後)は普通解雇の要件を満たせば解雇可能です。
したがって、事案によっては、症状固定の有無が争点となることもあります。
客観的合理的理由の判断
就業規則における「①身体又は精神の障害等により、業務に耐えられないと認められるとき」などの文言に該当し得ます。
ただし、次の裁判例があるので、当該裁判での説示内容を踏まえた対応を取らなければ解雇が無効となる可能性があります。
裁判例
精神不調が理由の欠勤につき、懲戒処分の有効性につき厳しく判断した例があります。
最二小判平24・4・27労判1055号5頁では、「正当な理由なしに無断欠勤」をすることが就業規則上懲戒事由として定められていました。
そして、裁判所は40日にわたり欠勤を続けていた従業員について、就業規則上の懲戒事由である無断欠勤に当たらないと判断しました。
精神的な不調で欠勤している労働者に対しては、精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、必要な場合は治療を進めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべきというのが理由です。
同最高裁の判断は、同事案の事実関係を踏まえた上での判断であるため、一般化はできませんが、考え方として留意しておくべきです。
(6)精神不調(うつ病等)(業務外で負傷した私傷病の場合)
解雇制限
まず、私傷病で精神不調となった場合は、労働基準法19条の解雇制限はありません。
客観的合理的理由の判断
就業規則における「①身体又は精神の障害等により、業務に耐えられないと認められるとき」などの文言に該当し得ます。
ただし、上記(5)同様に、最二小判平24・4・27労判1055号5頁の説示内容を全く無視してされた解雇は、客観的合理的理由がないと判断される可能性が高いでしょう。
(7)協調性の欠如
具体例
「上司の指示、方針に従わない」「自らの立場等を踏まえない不適切な言動を行う」「細部にこだわり、他の従業員に対応等の迷惑をかける」などが挙げられます。
客観的合理的理由の判断
一般論としては、協調性の欠如を理由とする解雇は相当ハードルが高いといえます。
それは、「社内での協調性はないが、業務自体は最低限行っている」といえる場合が少なくないからです。
また、協調性を欠く言動については、その原因、経緯も考慮に入れつつその程度を踏まえて判断されますが、協調性の欠如だけで解雇を肯定できる事案は多くはないと思われます。
そのため、協調性の欠如を理由とする解雇は、協調性の欠如の程度が重大であるか、会社側の指導等が十分になされている場合でなければ有効となりづらい類型と言えます。
裁判例
協調性の欠如を理由とする解雇を有効とした事例は多くはありませんが、有効とした裁判例としては次のものなどがあります。
①上司の指導や指示に従わず独断で行動に出るなど協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動等の改善の見込みが乏しいことを踏まえて解雇を有効としたもの(東京地裁平成28年9月21日判決、試用期間中の解雇の事案)。
解雇が無効となった場合の効果
普通解雇の要件を満たさず無効な場合、会社の帰責事由で就労できなかったと判断されます。
その結果、解雇後の期間の労働者の賃金請求権は消滅しません。
つまり、会社は解雇以降の賃金(バックペイ)も継続して支払う必要があります。
また、場合によっては、労働者からの慰謝料請求なども認められる可能性があります。
ご相談について
以上のとおり、普通解雇の要件を判断するには複雑かつ専門的な知識が必要となります。
また、解雇事案では、過去の事実関係を洗い出して、法律的に整理する必要があり、この点は労働者側、会社側問わずにご自身・自社で行うのは大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、このような作業の対応を任せることが可能です。
従業員の解雇を検討している会社、不当解雇されたとお考えの従業員の方は、お電話又はご相談フォームからご連絡下さい。

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